農薬散布用ドローンを活用した様々な取り組みは、全国各地で広まりつつあります。
今まで多くの労力を必要としていた作業も、ドローンの導入で簡単になったという事例が数多く報告されています。
ですが、良いことばかりではなく、ドローンの運用を行う上で生じる手間も存在します。今回は農薬散布用ドローンがもたらすメリットとデメリットを解説していきます。
人力での農薬散布の問題点
「きつい作業」で「人材不足」
農薬や肥料の散布を人力で行なっている農家の数多くは、その作業自体をとても「きつい作業」と感じていると思います。
動力散布機を背負い、穴の空いたチューブを田んぼの右から左まで伸ばして薬撒きながら歩くのはかなりの重労働です。
作業員が2人必要なので、家族総出で作業をするケースが多いようですが、圃場が大きい場合は人材を確保するのも大変な作業です。
若い人材は都会に出てしまうことが多く農業分野からは自然と遠ざかってしまうので、少人数の高齢者で大規模な農地を管理している場合は、人力での農薬散布は負担が大きくなってしまいます。
「危険な作業」
人力散布を行うと散布時に農薬と触れ合う危険性が高く、散布者の人体へ与える影響が心配だという声もあります。
地上散布用の農薬は希釈倍率を1000~2000倍にして使用します。
濃度自体は低濃度にあたりますが、圃場の面積によっては連日で散布を行いますし、長時間に渡り農薬散布を続けることもあり、人体に何かしらの影響を与える危険性があります。
農薬散布時の事故は毎年少数ながらも発生しています。
できるだけ接触を避けるように防護服などで身を守っていても、散布時に空中に漂う農薬の微粉末や霧を吸い込む可能性は否めません。
人力散布からドローン農薬散布に切り替えることで得られるメリット
ドローン農薬散布なら「きつくて危険な作業」から解放される
人力散布からドローンによる農薬散布に切り替えると、普段から感じていた「きつい農業」が「機械任せの楽な農業」へと変わっていきます。
散布にかかる時間も10分/1haと効率的になので、中規模〜大規模農場でも問題なく散布を完了させることが可能です。
作業はオペレーター1名で行うため、人材の確保の手間に煩わされることがなくなるのも大きなメリットと言えます。
また、人力散布と比べ散布者の人体に与える影響を最小のリスクに留めることができます。
ドローンを遠隔操縦することで散布を完了させることができるので、散布者が農薬と触れ合う時間が格段に少なくなるのも大きなメリットの一つと言えるでしょう。
ドローン農薬散布だけでなく生産管理も任せることができる
ドローンの活用方法は農薬散布だけではありません。
カメラを取り付けて飛行させることで、作物の育成状況を効率的に把握することができます。また、生産管理システムを導入し日々の育成状況をデータ化することで品質や生産性の向上を測ることも可能になります。
日々の育成具合を確認するために、圃場を歩き回ることに限界を感じている農家も多いのではないでしょうか。
規模が多いとそれだけで数時間かかってしまうケースもあります。
今まで農場を歩きながら得ていた情報が、ドローンを飛ばすことで効率的に得ることができるようになれば、生産者の負担も大きく減ることでしょう。
ドローンを利用した害虫駆除で作物の安全性をアップさせる
大切に育ててきた作物が害虫にやられてしまい、収穫まで至らないこともあります。
その年の収益が下がるのでそのような自体は農家にとって死活問題。害虫駆除は神経を使う作業でもあり、今まで多くの労力を必要としていました。
ドローンを導入すると近赤外線カメラやサーモカメラなど、ドローンに搭載するカメラをチェンジすることで害虫の発生を効率的に検知することができます。
害虫の発生箇所を正確に突き止めることにより、農薬をピンポイントに散布することが可能になるので、減農薬栽培に対する強力なアプローチも可能です。
消費者にとって信頼が高い、「安全性のある作物」を育成することで、市場価値の高い作物を生産することができるでしょう。
ドローンを使用した害獣管理で農作物の被害を最小限へ
農薬散布用ドローンは農作物に対する害獣対策を行いたい現場にも最適です。
赤外線サーモグラフィーカメラをドローンに搭載することで、夜間であっても圃場の監視をすることができるようになります。
それによって、どのような害獣がどのような経路で農作物に悪影響を与えているのか知ることができます。
ドローンを使用した害獣管理は各地で実績を残しており、メジャーになりつつあります。
今まで害獣被害が出るからと育てられなかった作物でも育成可能になり、事業の幅が広がる可能性があります。
ドローン農薬散布に切り替えることで発生するデメリットとは?
ドローン導入には数百万円のランニングコストがかかる
ドローンを導入するためにはいくつかの初期投資が必要になります。
運用に資格取得が必要になるのでスクールなどの費用が20~30万円程度かかります。
その後、機体購入という流れになりますがドローン機体は100万円以上かかるものが多く、運用し続けるためには毎年のメンテナンス費も必要になってきます。
人力散布と比べるとランニングコストの費用が大きくかかるのがデメリットではありますが、機体自体の耐久力も高く、メンテナンス費用の相場も無人機の中ではそう高くありません。
必要最低限のIT知識が必要になるので高齢者には抵抗があるケースも‥
最新技術である作物の生産管理や、ドローンの自動操縦などの技術を使用したい場合には必要最低限のIT知識が必要になります。
少なくともPCやタブレットなどの操作が必要になるので、扱いに抵抗がある人はドローンの導入が難しくなるとも言えます。
ですが、専門のサポートデスクやスクールでの実機操縦セミナーなどがあるので、必要知識の習得はそう難しいことではありません。
ドローン農薬散布を行うには数々の申請が必要になる
ドローンを利用した農薬散布を行う場合、農薬散布を行う際に国土交通省や農水協や都道府県(市町村)にあらかじめ許可申請を届出る必要があります。
まとめ
農薬散布用ドローンはメリットが多く、活用することで大きな利益を生み出す反面、発生するデメリットも少なからず存在しています。
ですが、農薬散布から育成状況の把握、害獣・害虫管理など、その全てがドローンを一つ飛ばすことで完了するとなると今まで感じていた苦労が大幅に軽減されるのは事実です。
多くの労力を必要としていた作業が短縮化されることで、時間も大幅に削減することができ、「辛い」「キツイ」と言われていた農業ではなく「効率的にスマートに稼げる農業」へとシフトチェンジさせることできます。
ドローンを導入することで、今までより楽に利益を上げることが可能になり、「これからの新しい農業」をスムーズに目指すことができるでしょう。