ひとえに農薬散布といっても、散布には様々な手法が存在しています。
水田を始めとし、畑や果樹園など育成する作物によっては、散布する農薬の種類や効率的な散布方法も変わってくるでしょう。
そんな様々なケースに対応できるよう、農業現場で使用される無人機もいくつかの種類が存在しています。
今回は農業現場で実際に使用されている無人機のスペックや用途を解説していきます。
農業現場で使用されている無人機は主に3種類
農業現場で使用されている主な無人機
現在、農業現場で使用されている主な無人機としては、ラジコンホバークラフト・無人ヘリコプター・農薬散布用ドローンの3つの機体が挙げられます。
どれも機密機器のため操縦やメンテナンスなど運用にコツが必要ですが、人力で散布するよりも効率的に作業をすることができるので導入している現場が多いのが現状です。
無人機によって用途やスペックが変わるので、導入メリットやデメリットは違いますし、圃場によって使用できない無人機もあるので注意が必要になります。
無人機にはどんなものがある?代表的なものの用途やスペック
ラジコンホバークラフト
RCホバークラフト(ラジコンホバークラフト)は、2サイクルのエンジンで稼働する除草剤散布用の無人機です。
約15分〜20分/1haの作業効率で散布を完了させることができます。
操作も比較的簡単と言われており、ラジコンの操作をしたことがない人でも操縦しやすいのが特徴です。
本体重量は21kgと軽量なので一人で持ち運びをすることができ、特別なテクニックがなくても無人機を運用できるとあって、老若男女問わず使用されています。
RCホバークラフトは水田のみの使用に限られます。
超音波センサー装置によって障害物を検知することで、散布中に作物に与える損傷を最小限に抑えており、機体底から散布を行うため、他作物への飛散の心配がありません。
◆除草剤散布用RCホバークラフト
https://goo.gl/HSw4ZD
無人ヘリコプター
無人ヘリコプターは、4サイクルのエンジンで稼働する無人航空機です。
最大24ℓの薬剤、または20kgの粒剤を搭載し、26PSのハイパワーで稼働するとあって大規模農業の現場で広く使用されています。
約6分/1haで農薬を散布することができるのが特徴で、総量は約70kgとやや重量があるので大人2人での積み下ろしが推奨されています。
導入のために操縦資格を取得する必要があるので、散布の際は自身で操縦資格を取得するか、農薬散布業者に作業を委託します。
◆無人航空機 FAZER
https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/heli/
農薬散布用ドローン
農薬散布用ドローンはバッテリーで稼働する無人航空機です。
機体は約9.5kgと軽量なので扱いやすく、最大10Lの薬剤、または10kgの粒剤を搭載し約10分/1haの作業効率で散布を行うことができます。
高性能なフライトコントローラーを搭載しているので落下のリスクを最小に抑えながらも安定した飛行が可能です。
農業現場に特化した性能を目指して開発されており、農薬散布だけでなく生産管理や害獣管理でも活躍することができます。
赤外線サーモグラフィーカメラや生産管理をサポートしてくれるソフトウェアなども充実しており、大規模な現場だけではなく小中規模な農業現場でも幅広く使用されています。
導入のために操縦資格が必要となりますので、自身で資格を取得するか散布業者に作業を依頼します。
◆農薬散布用ドローン MG-1
https://www.dji.com/jp/mg-1s
手軽な農薬散布を目指す!散布にかかる手間の違いは?
ラジコンホバークラフトは資格不要で散布も楽々!
RCホバークラフトは3つある無人機のうち、唯一資格不要で運用を開始することができます。
機体を購入後、すぐ現場に導入することができるので、運用までの時間や手間もかからないのが利点です。
しかし、散布できる薬剤は除草剤のみの設計となっているので、その他の農薬を散布したい場合は手作業で行うか、別の無人機を使用する必要があります。
●無人航空機であるヘリコプターとドローンは運用までに資格が必要
無人航空機である無人ヘリコプターや農業散布用ドローンはそれぞれの機動力が高く、液体から粒剤までどのような農薬も散布可能なので、オールマイティーな使用ができるのが利点です。
運用には操縦資格の取得が必須となっているので認定施設に通う手間が発生します。取得までの日数は機体によって変わりますが、約3日〜3週間かかります。
専門の知識や技術を必要とするので、機体を購入してからすぐ運用開始といかないのが難点です。
低コストな運用を目指す!散布にかかる費用の違いは?
水田のみの使用なら低コストなホバークラフト
RCホバークラフトは操縦のための資格を必要としないので、資格取得の費用がかかる心配がありません。
機体自体は約110万円から購入可能で、ランニングコストとして機体代のみで導入を開始することができるため必要費用を最小限に留めることが出来ます。
またメンテナンスにかかる点検費も約4万円からと、無人機の中ではそう高くありません。3つの無人機の内、一番低コストで導入運用ができる機体であるとも言えます。
ランニングコストが一番高いのは無人ヘリコプター
無人ヘリコプターはイニシャルコスト、ランニングコストともに一番かかります。
まず機体購入は約1000万円からと高額になっており、導入のためにはスクールに通う必要があります。スクール費用はコースによって変動がありますが、練習教材などの購入費も含め約20〜50万円が相場のようです。
継続的な運用をするためにはメンテナンスの費用も毎年かかります。
機体自体が高額のため保険加入が推奨されているのが現状です。メンテナンス費用と保険料は総額150万円〜/年がスタンダートとなっており、導入後のコストも高いのが難点です。
散布業者に業務を委託する場合にかかる費用は約15万円〜/1回が目安のようです。
コストパフォーマンスNo.1はやっぱりドローン
無人航空機である農業散布用ドローンの機体購入費用は約100万円からが相場となっており、無人ヘリコプターに比べて1/10の費用で導入することができます。
資格取得のための費用は19万〜35万円程度のスクールが多く、無人ヘリコプターに比べると安価に済むのが特徴です。
専門業者に農薬散布を委託するのではなく、自分自身で散布を行えるため低コストな運用をしている農家が多く存在しています。
農薬散布のみならず、そのほかの将来性や利便性を加味すると一番コストパフォーマンスがいい無人機であるといえるでしょう。
まとめ
どの無人機も一長一短。RCホバークラフトは使い勝手は良いですが用途が水田のみと限られているので、陸上使用も考慮した場合は必然的に無人ヘリコプターかドローンを選ぶことになります。
費用や手間なども気になる部分ではありますが、一番将来性が高い無人機といえばやはりドローンではないでしょうか。
農薬散布のみならず、生産管理や害獣管理の面でも農業現場に貢献している実績が多数存在しています。もし今から無人機の購入を検討しているなら、導入コストや運用コストだけでなく将来性も重視して、ドローンを選択するのがベストかもしれません。